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実は、別に彼女がいた

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そんなわけでこの京大生二人のディスコでナンパ事件は、ヒダカ君が○○教会へ走ってしまったことで、一応収束したかのように見えたのだが、実は話はそれだけでは終わらなかった。

 

と言うのもボクらは知らなかったのだが、アカイさんにはちゃんとした『彼女』がいたからである。

 

その『彼女』は高校時代に知り合った同級生だったらしい。

 

アカイさんは背こそそんなに高くはないが、スラッとした色白の青年で、三つ揃いの細身のスーツが実によく似合う人だった。

 

声も高くそしてよく食いよく笑い、いつも笑顔で話す人だった。

 

だから今思うと彼に彼女の一人もいないと考える方が、おかしなぐらいであったのだが、しかし本当にそんな特別な彼女がいるとは誰も知らなかった。

 

アカイさんは最初に書いた通り、麻雀するより世間話や噂話などをするのが好きな人で、楽しいことや面白い事などがあると、すぐさま周囲の人々にそれを話さずにはおれない人であった。

 

だからボクらは彼の事をかなり知っているような錯覚に陥っていたのだが、どうもそういう方面の話は意識的に避けていたらしい。

 

だから彼がディスコへナンパをしに行こうと言い出した時も、そしてそこで引っ掛けた彼女らと毎週のようにデートしだした時も、ボクらは彼が彼女欲しさにそういう挑戦をしているのだとばかり思っていた。

 

アカイさんはヒダカ君との一件があって以来、ボクの下宿へは寄り付かなくなったので、その後のことは詳しくは知らない。

 

がそう言うことに詳しいヨシザワ君によると、ディスコで知り合ったその彼女は、かなり本気でかなり積極的だったらしい。

 

彼女はまだグループ交際の段階の内にも、ひんぱんに「打ち合わせ」と称してアカイさんに電話をし、そしてアカイさんだけを呼び出してデートをしようとしていたらしい。

 

そしてアカイさんも当初は、ヒダカ君の事を気遣って彼女と二人だけで会うことは避けていたのだが、逆に彼女は強引に彼を引っ張り出しデートした。

 

彼の住所を調べ下宿にも上がり込み、そういう関係に持ち込んだ。

 

大学三回生にもなると女性は自分に、ステディな彼氏がいないことをものすごく気に病むようだから、彼女にそういう焦りか何かがあったのかも知れない。

 

あるいは彼女はアカイさんに、『彼女』がいると言う気配を早くから嗅ぎ取り、今なら何とかなるかもと彼に速攻をかけて、既成事実を作ってしまったのかも知れない。

 

アカイさんがその頃何を考えていたのかは、ボクには全く想像だにできない事であるが、しかしそこは二十歳やそこらの男のやる事である。

 

遊び半分・好奇心半分にちょっと軽目のノリでディスコへ行って、一度女の子を引っ掛けてみたかったたったそれだけだったのかも知れない。

 

彼にしてみれば「そんなつもりじゃなかった」というのが本音なのだろうがが、ディスコで知り合った彼女が京大生逃すまじと頑張り、そのお陰でアカイさんは若い身空で(?)、人生の大きな選択を迫られることになった。

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