風邪は万病のもと
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風邪は万病の元などと世間ではよく言うが、実際そう考えアマノ君たちのように、何がなんでも休養を取ろうとする人間はそうはいない。
それはシンガイ君が、アマノ君のやりかたに対して、ブツブツ文句を言っていたことでもよくわかる。
だが風邪などの感染症は、最初の三日間の対応が肝心なのである。
単なる風邪であれば暖かくしてタンパク質をしっかりとり、そして三日か四日じっくりと静養すれば問題はない。
さらに一週間ほど無理せず、すごせれば万全だ。
しかし最初の三日間の間にしっかり休まずに動き回ったり、身体を冷やしてさらに体調を崩すような事をしてしまうと、面倒な事になってしまう。
風邪を適当にあしらっているウチに免疫力が落ち、肺炎など普通の健康状態ならまずかからないような、細菌やウィルスに簡単に感染してしまう。
風邪への対応で身体の諸器官がフル稼働し、免疫力の元となるタンパク質や、ビタミンなどを使い果たしてしまったところに、さらに身体に負担の掛かるような事をするのだから当然だ。
免疫を担うのは免疫グロブリンやリゾチームというタンパク質だが、感染症などにかかるとすぐに消費されて尽きてしまうのである。
免疫グロブリンはタダでさえ半減期が短く、長いモノでも二十日ちょっと、短いモノではたった六日で半分に減ってしまうのである。
だから飽食と言われる今の日本でも、タンパク質の摂取量が不足すると、たった一週間で涙や皮膚から分泌される、免疫タンパクは健康時の半分以下に落ちてしまう。
免疫力も飢餓に苦しむ途上国の児童なみになってしまう。
そしてウィルスを撃退する特別な免疫ができるにも、少なくとも四日から七日ほど時間がかかる。
だからアマノ君のように雑用を全て他人に頼んででも、とにかく二三日動かずにしっかり栄養をとって、休むという方法が実は一番良い方法なのである。
育ちの良い人間はそうやって、病気に対する対処法をちゃんと心得ている。
そしてそのために、たとえゼイタクだと言われてもきちんとした部屋に住み、風邪くらいでもしっかり休むべきだと考えている。
そうやってみんながちゃんと養生することを知っているから、たとえ風邪くらいの病気でも助け合い、笑顔で仕事や学校に復帰できるのだ。
しかし貧乏人にはそういうことがまるでできない。
貧乏人にはそういう知識もないし、また知識があったとしてもまるで実践できない。
風邪を引いてもなかなか休もうと思わないし、休みを取ったとしても落ち着いて眠っていられない。
ボクなどは「働かなければ食って行けないから、風邪ぐらいで休んでなんかいられない」、などと言いながら仕事にでかけたり、少し気分がよくなると、「ああアレを今のうちにやっとかなきゃ」などとすぐに布団から起き出して、何やかやと身体をまた冷やしてしまう有様だ。
もちろん気分が良くなったといっても、病気はまだ完治していない。
熱が下がったからと言っても、普段通り出歩いていいわけではない。
ただ病気が急性期から平衡期に移行し、肉体が病気と四ツに組んだというだけである。
だからそこでちゃんと静養し、栄養を充分とってじっくり養生しなくてはならないのだが、貧乏人は平気で身体を酷使したり冷やしてしまう。
そうしてどんどんどんどん傷を深め、病気が慢性化して半病人になっていくのである。