貧乏人の食事は、エサより悪い
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考えてみると朝起きて、腹が減るというのは健康な証拠である。
なにせ朝食をとる時は、八時間以上も何も食べていないのが普通であるし、睡眠中に身体は肉体の更新や修理をしている訳だから、使えるタンパク質やビタミンは使い切っているはずだからである。
だから健全な肉体は朝、その失われた栄養を補給しようとして腹を減らすわけである。
しかし病人や貧乏人というのは、神経が正常ではないから腹が減らない。
ちゃんとした朝食も睡眠もとっていないのだからそれは当然だ。
そしてそれは病人や貧乏人に、日頃から疲労を蓄積させる事になるから、さらに朝起きる事も朝食べることもできなくなって行く。
だから裕福な人は睡眠と朝食にかなり気を使うのだが、残念ながらうちの母親にはそういうコトがまるでわかっていなかった。
朝食に食パンにマーガリンを塗りたくっただけのものと牛乳だけ、というカスみたいなモノを用意し、それを子供たちに勝手に食べさせた。
ハムエッグのようなものを作るでもなし、ツナサラダを用意して添えるでもなし。
そうしてたまにボクや弟が目玉焼きなど作ろうとすると、「勝手に卵なんか食べるな」と平気で怒ることが多かった。
つまりウチの母はまるで朝食をつくらなかった上に、食べる量まで制限したのである。
母はインスタントラーメンのようなものすら、育ち盛りの男の子の一食として、カウントしていたぐらいであるからそれも当然か。
だがしかしこういう食事は前述したがカスといってよい。
というのも栄養学的には、米や小麦に含まれるタンパク質はアミノ酸構成が悪く、豆や卵などの他のタンパク質と併食しなければ余分なモノとなり、身にならないからである。
それにこんな食事ではビタミンやミネラルに乏しいし、またマーガリンやバターといった油脂もただのカロリー源にしかならないから、神経を鈍麻させたり成人病を進めたりアレルギーを悪化させてしまうのである。
そんな狂った朝食を何年も続けたら、身体の具合がおかしくならない方が、不思議なくらいなのだが、そうなってもうちの母親は平気であった。
そしてまたうちの母は、寝具にも殆ど気を配らなかった。
自分は畳のある部屋で暖かく寝ていたくせに、子供が寒いタイル貼りの三角形の部屋で、小さな布団から足をだして寝ていても平気であった。
冷えは特に体に悪く腰や下肢などを冷やすと、腎臓や副腎まで冷やしてしまうことになり、リウマチやその他の慢性病の素因を作ってしまうと言われている。
腎臓と言うのは体内の老廃物を体外に出す最重要の器官で、これがイカれると体内に有害成分がどんどん溜まっていく。
だから尿毒症や腎不全などになると、人間はアッという間にダウンしてしまうのだが、もちろんそんな事を知らなくとも、体を冷やす事が健康に悪いと言うことは養生の基本である。
中国では夏でも子供に冷たいジュースなど飲ませないというくらいだから、ちゃんとした親なら絶対にそんな事はさせないはずなのである。
だがなぜだかうちの母親は平気でそういう事をした。
子供が文句を言わないのをいいことに、冬でも布団は足のすぐでるような、小さな布団を一枚きりしか用意しなかったし、靴や靴下やオーバーやコートなどもいい加減なものしか与えなかった。
そのせいかボクはもう高校生ぐらいから体調を崩し始め、それ以降何十年も体調不良に悩ませられ続けた。
三十過ぎになってようやくその事を知り、それが原因で風邪や頭痛を繰り返しているのに気づくまで苦しんだ。
だがしかしうちの母は家中が半病人の巣窟のようになっていても、「気のせいや」とか「先祖の祟りや」といって、まるで取り合おうとはしなかった。
だからボクは大学に入って、裕福な家の連中が朝からメシをバリバリ食い、彼らがクーラーやヒーターの効いた部屋で、幸せそうにぐっすり眠るのを何度も見ても、なかなかそれが普通の健康的な生活だとは理解できなかった。
自分のこれまで経験してきた暮らし方が標準的で、それ以上は余分なものでゼイタクだと思い込んでいた。