ユカリさんが住まいを決めた理由とは
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だがしかしやはりそれは、とんでもない理由からであった。
貧乏人にはとうてい思いつかないような、ゼイタクな理由からであった。
その理由をボクが知ったのは、やはりユカリさんの家に行った時のことであった。
いつものようにボクらが彼女の部屋で麻雀して遊んでいると、ベランダの方から「クゥーン…」という、動物の鳴き声が聞こえたのだ。
彼女の部屋は二階だし、広いと言っても一LDKである。
だから動物など外にいようはずもない。
だからボクは「何だろう…」と不審に思ってそちらを見たのだが、別に何も変わった様子はなかった。
振り返って雀卓の様子をみても、アマノ君やユカリさんたちは何事もなかったような顔をして、牌を並び替えている。
だからボクは幻聴かと思って、また自分の手元に視線を戻したのだが、しばらくするとまた「クゥーン…」という声が聞こえて来た。
(やっぱり何か居る!)ボクはそれを確信し、そして思い切ってユカリさんに「ユカリさん、何か鳴き声が聞こえるみたいだけど……?」と尋ねてみた。
「ひょっとして何か外に居るの?」。
それに対して彼女は自分の牌を見つめながら、事もなげに一言「いぬ!」と答えた。
犬?!ボクは一瞬自分の耳を疑った。
なんで犬なんかいるのだ?
ここは広いと言ってもやはりアパートだし、大学生の下宿だろ?それなのに何で犬なんかいるのだ?
「まさかユカリさん犬なんか飼ってるの?」
とボクがビックリしてそう聞き返すと、ユカリさんは面倒くさそうに牌を伏せて立ち上がり、そうしてベランダの扉を開けて、「リリィおいで!」と愛犬を部屋の中に呼び入れた。
扉を開けるのを待ちに待っていたそのリリィは、シープドッグか何かだったように思うが、アパートでこんな大きさの犬を飼えるのかと思うような大きな犬だった。
ボクが慌ててボクがベランダをのぞいてみると、そこにはどこから入れたのかと思うような、大きな犬小屋がしっかり据え付けられ、あちこちに犬用のガムやオモチャが散らかっている。
「エーッ、まさか。ユカリさん大学で勉強するのに、わざわざ犬まで連れてきたのーっ?!」
ボクがあきれてそう言うと、彼女は憮然とした表情で
「別に大学に通うのに犬連れて来てはいけないっていう
決まりなんかないんじゃない?」とおっしゃった。
そして続けて
「このコって昔っから病気がちだから、実家に置いとくと可哀相じゃない?
それにさリリィもアタシと一緒に来たがっていたし。
ねっリリィ?」などと言い、腰をかがめて激しく尻尾を振るリリィの、首のあたりをグリグリグリとなでまわした。
「うーん…」ボクは唸った。
確かにそういう事をしていけないっていう法はないけど、しかし大学で勉強するのに犬まで連れてくるか、普通ーっ!しかもこんなに大きな犬を。
「お腹すいちゃったのねーリリィ!
それで起きちゃったんだ」
ユカリさんはそんなことを言い、そしてリリィに餌をやった。