裕福な人間はガラクタをつかまない。そしてその一方で貧乏人は、山ほどガラクタをつかみ、せっせとそれにムダなお金と時間を使っている。これが本当だとすると裕福な人間はなぜ、ガラクタをつかまないのだろう。確率論的に言えば、たとえ貧乏人であろうと金持ちであろうと、目を閉じて「エイヤッ」とモノをつかめば、同じ割合でガラクタを引いてくるはずである。世の中には本当に運の良い人間というのもいるが、いくら裕福な人間で...
第8章、育ちの良さは加速する 記事一覧
パチンコで勝っていても負けていても、飽きたらさっさと止められる。彼女の口からなぜ、そういう感覚的な言葉しか出てこなかったのか。そこにボクは育ちのいい人間というものが、なぜガラクタをつかまないか、そしてガラクタをつかんでも、なぜすぐ手放すことができるかという疑問を解く、重要な鍵を見つけた。彼らはどうもアタマではなく、皮膚感覚や五官全部でそれを感じているらしい。彼らは何らかのシグナルによって、本能に近...
育ちのいい人間がなぜガラクタをつかまないか、そしてガラクタをつかんでもすぐに、それを手放してしまえるかという原因は五蘊盛苦ではないか。物質的にも肉体的にも精神的にも良い環境で育った彼らは、無意識のうちに識として築き上げた、その良い環境を物差しにして世界を測るのだ。以前幼い頃からの友人のヤグチ君に、「ギャンブルなんかはせえへんの?」と尋ねたことがあったが、彼はその時即座に「パチンコはタバコの煙とか音...
第二次世界大戦で、東アジアは甚大な被害を被った。日本による大陸への進出侵略、それに対抗した連合国の日本攻略、ソ連による終戦間際の物質的略奪、中国による共産主義的膨張と思想侵犯、韓国・朝鮮による周辺国の軍隊を引き込んでの、有史以来のいつもの権力闘争。そういう諸々の破壊の中から、なぜ日本と台湾と香港だけが、すぐに繁栄を取り戻したかと言えば、これらの地域が戦前すでにかなり高水準の社会を、築きあげていたか...
ボクは自分からは滅多に他人には話しかけないし、自分のことも進んで他人に話すことはない。それは恐らく小学生のころから貧乏だったせいもあるし、両親がいつも夫婦ゲンカに明け暮れ、それに怯えるような毎日だったから消耗していたせいもあるだろう。さらに鼻づまりで頭痛持ちで、うまく笑顔が作れなかったせいもある。おまけに中一の時に転校したから、小・中・高・大学と共に進学した友人など一人もいない。女兄弟もいないし、...
ボクのアマノ君に対する評価は、初めは非常に低かった。というのも彼は男なら普通にできそうなことも、なかなかできなかったからである。たとえば知り合った当初のアマノ君は全くの機械オンチで、レコードプレイヤーを買ったときもビデオを買った時も、彼は「わかんないんだよぉ!」とか「映らないんだよぉ!」などと言ってシンガイ君やボクらを呼んだ。今考えてみるとそれは彼の友達を呼ぶための、一種の口実のようなものだったの...
ボクにはアマノ君が三四回生の頃から急激に成長したのと、ビートたけしさんがマンザイブームを経て、メキメキとその才能を発揮しだしたのには、何か共通したものがあるように感じた。彼らに共通する自分の失敗や恥ずかしいことを、恥も外聞もなく他人に広く披露できるという性格が、彼らの爆発的な成長や発展の、大きな要因であるかのように思えて仕方なかった。彼らは共に何もそんな情けない事まで他人に話さなくても、というよう...
ブッダのそういう問いに対して、残念ながら弟子たちは答えることができなかった。まあ答えを自分で出せないからこそ、ブッダに付いて学んでいるわけだから、答えられなくてもおかしくはない。だから弟子たちはブッダに対して教えを乞うた。「わかりません。申し訳ないですが教えて下さいブッダよ」と。それに対してのブッダの説明はこうであった。「仏の教えを未だ聞いていない世間一般の人間というものは、悲しいことや苦しいこと...
「一の矢は受けても二の矢、三の矢は受けず」。ボクはこの言葉を何度も何度も繰り返した。もちろん自分の頭にしっかりたたき込むために。誰だって失敗はするのだ。裕福な人間であろうと貧乏人であろうと。誰だって病気になったりケガをしたり、運の悪い目に逢うのだ。もちろん最初の大失敗で、不具になったり命を落としたりすれば、それは「不運」としてあきらめるしかない。そういう運命だったと、そういう不運が自分に当たったの...
確かに自分の失敗談や情けない話をみんなにすれば、同情は買わなくても何らかの情報は得られる。同じような失敗をした人間から、話を聞けることだってよくある。そして他人の失敗は蜜の味などと言って、失敗談をすると友人や知り合いは、ボクが当初アマノ君に抱いたような微かな優越感に浸り、侮りながらも優しい心になってその者を助ける事だって多い。同じ失敗を経験した人間は、仲間が見つかったとばかり喜んで自分の体験談を話...